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2007年1月

コンサートレビュー 音楽の友 3月号より

池田京子 S

「文化庁芸術家特別派遣研修報告~アメリカの夜~」と題されたリサイタルは、ピアノに花岡千春が招かれた。米国インディアナ大学で、芸術歌曲の研鑽を深めた成果によるリサイタルである。前半はE・W・コルンゴルトの作品が集められた。最初の《3つの歌》作品22は表現主義的作風に感じられたが、最初の2曲のゆったりした表情が3曲目で動きが加わったその対比感がよく、冴えが感じられる。

 つづいて《シェイクスピアの詩による4つの歌》作品31、《5つの歌》作品38が演奏された。声そのものに生きた流れがあって、そのスピード感を調整することで基本的な表現をコントロールしているように聴けた。

 後半にはL・バーンスタインの《美味しい料理―4つのレシピ―》とW・ボルコムの《キャバレーソング》より6曲が選ばれて、現代アメリカの色彩を帯びた表情が楽しかった。しかし何といっても暖かみと実在感の高い歌唱が一貫しているのが筋の通ったプログラム構成を演出した根源であろう。

(2007年1月11日・しらかわホール)<渡辺 康 記>