ひとこと ソプラノ 池田京子  (響の会通信 vol.9 2000.12)         ひとことへ戻る

 早いもので今年も歳の暮れを迎えようとしています。2000年はバッハ・イヤーで没後250年を記念して、沢山の公演がおこなわれました。私も名古屋国際室内楽フェスティバルをはじめ、いくつかのコンサートでカンタータやオラトリオを歌わせていただきました。
 今年の活動の中には、久しぶりのオペラ公演がありました。(財)ニッセイ文化振興財団が主催する青少年のためのオペラ公演「ヘンゼルとグレーテル」です。その母性は日本生命で、メセナ活動として毎年、中高生を対象に、本物のオペラを手を抜かずに上演してきています。ちなみに演出家は鈴木敬介、指揮者は沼尻竜海典、オーケストラは新星日響、舞台装置はウィーンで作らせて運んでいます。舞台美術家のパンテリス・デシラスは来日して、プレミエの日までお付き合いくださいました。
 ヘンゼルをはじめグレーデルもお母さんもお父さんも、すべての役にオーディションが行われました。関東のみならず全国からオーディションを受けにこられたようです。日本でのオペラ公演のスタンダードは、2〜3ヶ月のあいだ毎晩稽古場での練習があり、本番は1回。そして♪ギャラより高い交通〜費〜♪(こいのばりのメロディーで)と歌われるように、その全報酬は3万円か5万円ぐらいです。これに比べるとニッセイ財団のこの企画は、私たちには考えられないほどまともです。あたりまえなのですが・・・・ 1公演につき1コンサート分が支払われます。
 私の演じた役「眠りの精」と澤畑恵美さんの演じた「露の精」には200人を超えるソプラノの応募があったそうです。しかし結局、オーディションでは決まらず、この2役だけは指名依頼となりました。この2つの役は小さな役ですが、往年の名歌手、いえいえ、まだまだ現役の大御所、中沢桂さんや常森寿子さんたちが演じてこられた大切な役どころです。今,一番売れっ子のソプラノのひとり澤畑さんはともかく、私では名歌手ならぬ迷歌手ですが、大きなプレッシャーを感じながらも、全6公演を毎日、とても楽しく演じることができました。

前列中央が眠りの精 池田さん