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2006年11月

コンサートレビュー 音楽の友 11月号より

池田京子 S

 従来、ドイツ・リートを中心に歌ってきた池田京子が、「アメリカの夜」として20世紀アメリカ歌曲を歌った。文化庁芸術家特別派遣研修で、インディアナ大学客員研修を了え、その成果を歌うリサイタルだった。

彼女はこの日、コルンゴルト、バーンスタイン、ボルコムの歌曲を採りあげたが、1938年生まれのボルコム作品は日本でほとんど歌われてなかったように思う。歌われたのは数曲のキャバレーソングだったが、紫煙漂う場のための歌ながら、シェーンベルクの同種の歌たちとはまた別の魅力があり、〈ピアノ越しに〉〈待ってるわ〉など何か香気も匂い立っていた。池田の歌もいいムードだった。

 前半はすっかりコルンゴルトだったが、《シェイクスピアの詩による4つの歌》《5つの歌》作品38など、どこか世紀末ウィーンの風情らしさも滲み、表情も多彩。池田歌唱がリートのニュアンスを残したともいえる。バーンスタイン《美味しい料理》は手中のものなのだろう、ウィットに富んだ歌のレシピになっていた。ピアノ花岡千春もボルコムなど秀逸。

(2006年9月20日・東京文化会館〈小〉)<小山 晃 記>